海外進出・展開をする際に大きな課題となるのは「資金」ではないでしょうか。
本メディアは東南アジアを中心とした日本企業の海外進出・展開に関する情報の発信を行なっていますが、これまでは大手企業が生産の拠点としての機能を持たせるために海外進出してきた傾向が見られましたが、最近では中小企業でかつ、非製造業の日本企業も海外進出を行うようになりました。
中小企業は必ずしも大手のように資金が潤沢にある訳ではなく、限られた予算の中で最大限の成果をあげることが求められます。
執筆している私も東南アジアでの事業の立ち上げの経験がありますが、海外での事業のリスクを下げ、成功確率を上げる経営資源は「カネ」である、資金です。
資金に乏しい海外進出は国内・海外共倒れのリスクがあるので、資金を補ってくれる補助金・助成金は企業の頼もしい味方であります。
そこで本記事では海外進出の際に使うことのできる補助金・助成金の最新情報をまずは下記に一覧にしており、またその後に詳細をまとめましたので検討している企業の担当者の方は参考にしてみてください。
【海外進出の際に使える補助金・助成金一覧】
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル展開型)
- JAPANブランド育成支援事業
- 中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
- 普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型)
【その他の支援制度や融資制度】
- 海外見本市・展示会出展支援(ジャパン・パビリオン)
- 海外展開・事業再編資金
- 中堅・中小企業向け融資
海外進出を手助けする補助金と助成金
どのような海外進出・展開の形をとるのかにもよりますが、海外進出・展開をするにあたりかかってくる費用は立ち上げ期、拡大期共に数多くあります。
-事前調査
-視察
-海外向けに製品・サービスの開発製造
-展示会への出店
-法人の設立
-賃料や人材
-コンサルティング費用
-HP作成
-販売促進費
まとまってコストがかかってくるほか、海外で事業は一筋縄では行かないことが多いので、ある程度資金に余裕があったほうが良いと言えるでしょう。
そんな時に活用できるのが国や公的機関、地方公共団体、民間団体などから金銭的なサポートを受けることができる補助金と助成金です。
補助金と助成金の違いとは?
まず「補助金と助成金って違いってあるの?」ということですが、補助金と助成金の違いはほとんどありません。
その中でも補助金のポイントとしては一般的に「公募型のものが多い」「期間が短い」また「申請の要件を満たしていたとしても審査が通らない可能性がある」「支給額が助成金よりも大きい」傾向にあります。
一方で助成金はしっかりと資料や書類を準備すれば「通る可能性が高く」、原則的には「通年を通して申請可能」なものとなっています。
補助金と助成金を活用するメリット
海外進出の際に補助金や助成金を活用するメリットはどこにあるのでしょうか?
1.返済なし、利息なし
原則として補助金や助成金は返済が不要で、銀行からの融資などと違い利息が無いことが大きなメリットです。
事業を行う上で返済の必要がなく、利息のない金銭的なサポートを受けられることは大きなアドバンテージとなるでしょう。
特に事業の立ち上げの初期はほとんどの場合が投資額が売上を上回っている赤字の状態ですから、事業としての持続性を上げるとともに責任者の精神的な負担を緩和することができるでしょう。
2.知見やコネクション
補助金と助成金を活用するメリットとしては支援元に海外進出に関する様々な知見や経験、知識が溜まっており、それを共有してもらえる可能性があることです。
それに加え、多くの企業が海外進出時に補助金や助成金を使っているので、そこでの先行事例やコネクションなどが得られることもできるでしょう。
海外進出においては国内の事業では起こり得ないような不測の事態やリスクもありますので「情報」を多く収集することができると言うのは大きな強みの1つとなり得ます。
補助金と助成金を活用する注意点・デメリット
1.受給のタイミングは投資の後
補助金と助成金は一般的な資金調達とは異なり、申請が通ったからと言ってすぐにキャッシュが入ってこない、使うことができない点に注意をした方が良いでしょう。
具体的には事業の立ち上げや拡大に使われた資金のうちの一部が補助、助成と言う形で後から戻ってくる流れになります。
なのでまずは自社でキャッシュを用意しておく必要があるところが注意点であり、資金調達と比べた際のデメリットでもあります。
2. 事業のスピード感や柔軟性に欠ける可能性
2つ目のデメリットとしては補助金や助成金は申請までに様々な書類を揃える必要があったり、実際に審査が通るまで時間がかかることもあります。
スピード感を意識した海外進出や展開には適しておらず、費用の使い道などの制限を受けることもあるので柔軟性に欠けてしまう可能性があります。
そのため市場の変化が激しい分野や業界、何かしらの理由でデッドラインが設けられているプロジェクトなどには向いていない、意思決定を妨げることがあるので活用はお勧めできません。
【機関別】海外進出に使える補助金、助成金で支援を行う機関
海外進出に際しての補助金、助成金制度を設けている機関をまとめ、解説していきます。
政府による補助金、助成金
日本政府として「クールジャパン」などで海外への認知を進めていることもあり、日本企業の海外進出の促進を行う手段の一環として補助金や助成金を活用できる制度を設けています。
政府が実施している補助金、助成金には経済産業省のものと、厚生労働省が実施しているものがあります。(具体的な補助金、助成金は後述しています)
経済産業省の補助金は財源は税金で、起業促進や地域活性化、中小企業振興、技術振興のための補助を公募で行なっています。
また厚生労働省のものは海外進出専門と言う訳ではないですが、主に雇用の促進や労働者の職業能力向上を目的とした助成を行なっており、海外進出においても活用することができるものがあります。
都道府県や市町村などの自治体による補助金、助成金
都道府県や、市町村単位の各自治体によって支給される補助金、助成金もあります。
自治体などによってはジェトロなどと協力をし、海外進出の支援を行うため海外現地にサポートデスク・海外産業情報センターなどの拠点を置いている場合や海外と独自で経済交流促進を行うための覚書の締結などを行い、ビジネスサポートや情報共有などを行なっているところもあります。
会社の所在地がある自治体のHPを確認してみたり、問い合わせなどを行なって随時、補助金や助成金の情報をキャッチしておくことが大切です。
またこの他にも大手企業による「海外進出」を交えたビジネスプランコンテストなどが開催され、補助金や助成金を受けることができたり、大手企業との協業の機会が得られたりすることもありますのでアンテナを張っておくべきでしょう。
【目的別】海外進出に使えるの補助金、助成金一覧
海外進出に使える補助金、助成金の一覧をまとめていきます。
ただし下記に記載の補助金や助成金に関しては2021年2月時点でのものであり、時期や公募の状況によっては募集が終了している、募集が開始されていないことがあります。
詳しい状況、情報に関しては公式HPをご覧になってください。
1. IT導入補助金
【概要】中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズ感に合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務の効率化や売上アップ、またそれに伴う経営力の向上・強化を狙った補助金
【補助対象者】中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)、小規模事業者
【補助対象経費】ソフトウエア費、導入関連費等(サイトにて公開のITツールが補助金の対象)
【補助金額】30万円~450万円
【補助率】3/4以内
【HP】IT導入補助金2020 https://www.it-hojo.jp/
よくある事例
海外への販路開拓を行いたい企業が越境のECサイト導入
2. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル展開型)
【概要】中小企業者等が海外事業の拡大や強化等を目的として「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援することが目的の補助金。この補助金は海外直接投資、海外市場開拓、インバウンド市場開拓、海外事業者との共同事業のいずれかである必要がある
【補助対象者】中小企業(製造業、建設業、運輸業、卸売業、サービス業、小売業、ゴム製品製造業、ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業、その他の業種)
【補助対象経費】機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費
【補助金額】1,000万円~3,000万円
【補助率】中小企業者 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
【HP】ものづくり補助金総合サイト https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
令和3年2月の採択結果
応募者数:271 採択者数:46 と採択率は良くはなさそうですが、応募者が多くない状況です
採択事業者インタビュー記事
ベトナム工場との連携で業界をリード!湯本電機が見据える未来とは?|ベトナム進出企業インタビュー
カンボジア発、世界に通じるサービスを!ラストマイルワークス独自の戦略に迫る|カンボジア進出企業インタビュー
3. JAPANブランド育成支援事業
【概要】中小企業の新たな海外販路の開拓に繋げるために、複数の中小企業が連携し、自らの持つ素材や技術等の強みを踏まえた戦略の策定支援を行うと共にそれに基づいて行う商品の開発や海外展示会出店等の取り組みに対する支援を実行するものであり、地域の産品や技術の魅力をさらに高め、世界に通用するブランド力の確率を目指す取り組みに要する経費の一部を補助する制度。海外進出前の戦略策定段階と進出後のブランド確立のための支援が受けられる
【補助対象者】中小企業者
【補助対象経費】(戦略策定段階への支援)専門家、市場分析、セミナー開催などへの取組
(ブランド確立段階への支援)専門家、新商品開発、展示会出展などへの取組
【補助金額】(戦略策定段階への支援)上限200万円
(ブランド確率段階への支援)上限2,000万円
【補助率】(戦略策定段階への支援)定額
(ブランド確率段階への支援)1・2年目は2/3、3年目は1/2
【HP】中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/chiiki/japan_brand/index.htm
具体的な採択事例
ミャンマーへの日本酒の輸出の促進とブランドの確立プロジェクト
4. 中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
【概要】経済のグローバル化に伴って、海外進出を行う際に大切になってくる知的財産権だが、知的財産権は国ごとに独立しているため日本で出願、登録していても外国では権利として成立しない。進出先においても特許権や商標権等は国ごとに申請と取得の必要があるため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成する補助金
【補助対象者】中小企業
【補助対象経費】外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費 等
【補助金額】上限300万円
【補助率】1/2
【HP】特許庁 https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html
具体的な採択事例
独自技術で軽量の瓦を開発、知的財産権で保護した上でベトナムに進出
5. 普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型)
【概要】JICAが支援する「普及・実証・ビジネス化事業」は途上国の課題解決に貢献できる可能性があるビジネスの事業化(具体的には環境・エネルギー、廃棄物処理、水の浄化・水処理などの基本的な社会インフラ)に向けて、技術や製品・知見等を現地での実証実験を含んだビジネスモデルの検証、製品の理解促進、ODA事業での活用可能性の検討等を通じ、事業計画案を策定するもの。原則的にJICAの事務所や支所があるODA対象国となる。公募は年に2回程度
【補助対象者】中小企業
【補助金額】上限1.5億円
【HP】jica https://www.jica.go.jp/priv_partner/activities/smebvs/index.html
具体的な採択事例
タイでの障害者向けの着脱式自動車運転補助装置の普及・実証事業
海外ビジネス拡大のための補助や融資
海外ビジネスを拡大するために活用できる補助や融資制度の紹介をします。
1. 海外見本市・展示会出展支援(ジャパン・パビリオン)
【概要】日本貿易振興機構(ジェトロ)が行う日本企業の販路の拡大の支援を行うための見本市や展示会への出店支援を受けることができる。ジェトロのジャパンブースに出店することで単独出展に比べてデザイン代や現地での広報活動費を安く抑えられ、またジェトロが一部出展経費を補助する見本市や展示会がある
【HP】ジェトロ https://www.jetro.go.jp/services/tradefair/
2. 海外展開・事業再編資金
【概要】日本政策金融公庫の融資制度で経済の構造的変化などに適応するために海外展開することが経営上必要であったり、海外展開事業を再編しなければならない事業者に対して貸付られるもの
【使い道】設備資金および長期運転資金
【融資限度額】直接貸付 別枠14億4千万円(うち運転資金9億6千万円)/ 代理貸付 別枠1億2千万円
【利率(年)】基準利率
【HP】日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/kaigaitenkai_t.html
3. 中堅・中小企業向け融資
【概要】国際協力銀行が行なっている融資制度で中堅・中小企業向けの施策。日本企業の海外投資や製品輸出などに必要な長期資金を、民間金融機関との協調融資等で支援
【HP】JBIC https://www.jbic.go.jp/ja/business-areas/sectors/smes.html
【まとめ】海外進出に使えるの補助金、助成金
海外進出、事業拡大においてもっとも外すことのできな経営資源は「カネ」である資金です。
私自身も経験があるのでわかりますが、海外にまつわる事業は国内の事業に比べても様々な不測の事態が起き、ハードルが非常に高いです。
その中で補助金・助成金は審査が通ってから振りこまれるという性質はあるものの、実質的なコストを抑えられるということは事業に大きなプラスになることは間違いないですし、責任者の精神的な負担も少なくなります。
補助金や助成金は利用の目的や、時期によっても使えるもの変わってきます。
また事業計画書など綿密に、他社の事例も参考に作り込まないと「相当な時間をかけて作ったのに採択されない」という可能性も考えられます。
東南アジア進出ナビでは補助金や助成金の申請から進出後の実務まで一貫して、経験のあるコンサルタントがサポート可能です。
「海外進出を検討しているけれど資金がそれほど潤沢でない」
「申請書を作る時間がない、通過の可能性を上げたい」
「社内に適切な人材がいない」
などがもしありましたら簡単な無料相談から行なっておりますので、お気軽にお問い合わせいただけたらと思います。